転職活動中に、どのくらいの企業に応募すればよいのか、疑問に思う方も多いでしょう。
各転職エージェントやサイトが公表している応募数の目安はさまざまですが、複数のデータをもとに平均値を算出することで、おおよその目安を知ることは可能です。
この記事では、大手人材企業5社のデータを比較し、転職活動における応募社数の目安を解説します。
転職先を決めるまでの平均応募数は15~20社
各社のデータを総合して分析すると、転職先を決めるために必要な平均応募数は「15~20社」でした。
特徴としては転職エージェントは約25社の応募数を求めるのに対して、転職サイトは10社の応募数で、約2倍の開きがありました。ただ、転職エージェントの効率が悪いのかというとそういうわけではないでしょう。
エージェントの場合は、求人媒体よりも採用要件が高い求人が多いことが背景にあるからです。また、コンサルタントが担当として付くため、どこの企業でも良いから内定を狙うという妥協をせず、求職者のスキルや能力に見合った会社を狙うため、応募数が増えるのだと思われます。
とはいえ、単純に必要応募数の平均を求めると「15~20社」という数値に落ち着きます。各社がどういうデータを公表しているか個別数値を見ていきましょう。
リクルートエージェントさんの公表データ
調査母体:リクルートエージェント(転職エージェント)
参照データ:転職活動でみんな何社に応募してる?応募数の目安と成功のポイントとは
転職した人の約半数は「20社」以上に応募しているという目安が記されています。
平均値は出されていなかったのですが、転職した方の26,762名のデータから算出されています。約7割以上の人が10社以上に応募、半数に近い人が20社以上に応募しており、30社以上に応募した人も3割に達しています。
<転職成功者の応募数>
応募1~9社まで:28%
応募10~19社:26%
応募20~29社:16%
応募30社~:30%
dodaさんの公表データ
調査母体:doda(転職エージェント)
参照データ:転職成功者の「平均応募社数」より参照
転職した方の応募した求人の平均数は「27社」となっています。
また、ありがたいことに職種別の応募数のデータも開示してくれていますので、引用させてもらいます。職種によっては、かなり差があるのが分かります。
<職種別の応募数>
営業職:28.9社
企画・管理職:31.1社
クリエイティブ職:31.2社
技術職(IT/通信):28.5社
医療専門職:16.6社
技術職(機械/電子/組み込み):20.9社
技術職(素材/化学/食品):18.9社
技術職(建築/土木):21.4社
金融専門職・コンサルタント:26.9社
事務・アシスタント職:34.3社
販売・サービス職:24.9社
リクナビNEXTさんの公表データ
調査母体:リクナビNEXT(転職サイト)
参照データ:「転職するときの適切な応募数とは?転職成功者の平均応募数・内定率」より参照
転職した方の応募した平均の求人数は「7.5社」となっています。
リクナビNEXTが独自にアンケート調査を行い、5年以内に転職した20~30代正社員 男女1000名の内、知人の紹介で決定した方を除く転職成功者に対して、企業への応募数や面接に通過した社数、内定社数について聞いています。
アンケート結果では、応募数の平均は7.5社、面接した企業の平均は3.4社、内定が出たのは一人あたり平均1.4社となっています。平均すると、応募から書類選考の通過率は約5割、面接からの内定率は約4割となっています。
マイナビさんの公表データ
調査母体:株式会社マイナビ(転職サイト)
参照データ:「転職動向調査2024年版(2023年実績)より参照
転職成功者の平均応募社数は「8.8件」となっています。
転職者は活動期間を通じて平均28.4件の求人を閲覧し、平均8.8件に応募しているとのことです。また、そのうち面接まで進んだ数は平均3.6件です。書類選考の通過率はおおよそ3分の1程度、面接の通過率はさらに2分の1程度になるといわれています。
Greenさんの公表データ
調査母体:Green(転職サイト)
参照データ:「内定までの必要応募数」より参照
同社も平均数の記載はなかったのですが、「1社内定を目指すなら7社」、2社内定を目指すなら倍の14社を目安に応募するのがよい、という目安の記載があります。
<転職成功者の応募数>
応募1~4社:35%
応募5~9社:23%
応募10~19社:21%
応募20~29社:8%
応募30社以上:11%
データ考察
内定が出ていない人もいる
今回参照したデータはいずれも転職成功者を母数とした調査となっています。
つまり、何らかの理由で転職活動がうまく行っていなかったり、途中で停止した人は分母に含まれていません。それを考慮すると、少し応募数は多めに見積もっておいた方が良いかもしれません。
あくまで、転職がうまく行った人の平均数と言うことを頭に入れておいてもらえればと思います。
人気企業の求人は競争率が高い
リクルートエージェントさんが興味深いデータを開示してくれています。
下記は、新規求人1件につき、どれくらいの応募数があるかの平均データです。新規の求人に対し、1週間後には約23人、2週間後には約68人の応募者がいることを示しています。つまりは「ライバル」が存在しているということです。
筆者はエージェントの経験が長いのですが、こちらのデータは体感値と合います。1日に5人の応募があっただけでも、1週間で35名の応募があるわけです。採用要件に見合った応募をしていても、人気企業の場合は相対的に見送られてしまう可能性があるのです。
少しでも知名度がある企業の場合は、多数のライバルと競いながら選考を進めて行かなければならないのは間違いないでしょう。
応募社数を多くすべきか少なくすべきか
転職活動を成功させるための応募目安は見えてきましたが、あくまで平均の数値でしかありません。
1社で内定が出た人のデータから、100社応募した人のデータまでさまざま混じった平均となっています。そのため、自身の場合は多めに応募した方が良いのか、少しずつ進めた方がいいのか判断をしなければなりません。
応募者数を増やすことのメリット・デメリットを見ていきましょう。
応募社数を増やすメリット
比較ができる
応募社数を増やすメリットの一つは、複数の企業を比較できることです。給与や待遇、企業文化、成長性など、さまざまな条件を比較することで、自分に最も合った企業を見つけることができます。
転職活動は、ただ内定を得るだけではなく、長期的に働ける企業を選ぶためのプロセスでもあります。多くの企業に応募することで、選択肢が増え、最終的に自分にぴったりの企業に出会える可能性が高まります。
市場価値の平均とズレにくくなる
多くの企業に応募することで、自分の市場価値を客観的に評価することもできます。
例えば、1社応募して1社目で内定が出た場合は、もしかしたらもっと格上の企業を狙うこともできるかもしれません。より待遇の良い企業で内定が狙えるかもしれません。
いたずらに多く応募する必要はありませんが、1,2社の応募で内定が出た時はもしかしたら希望を下げ過ぎている可能性もあるかも、と自問しするのも大事です。
応募社数を増やすデメリット
1社あたりの準備時間が減る
応募社数を増やすデメリットとして、1社ごとの準備時間が減ることが挙げられます。転職活動では、企業ごとの選考プロセスに合わせた準備が重要です。応募する企業が増えると、その分、1社ごとに時間をかけることが難しくなり、結果的に応募書類や面接準備が不十分になる可能性があります。
実際、働きながらの選考となると多くの人の場合は1週間に2社程度の面接だけでもかなり体力と気力を持っていかれることでしょう。現実的な体力を考えると、1度での応募は多くても10社程度に抑えて、書類選考の通過状況を見ながら応募を積み増していくのがよいかもしれません。
スケジュールの調整が大変になる
応募社数が増えると、面接や書類提出のスケジュールが重なることが多くなります。
複数の企業で選考が進むと、日程調整が難しくなり、志望道がある企業にも関わらず面接のキャンセルや選考辞退に追い込まれることも考えられます。
ただ、それよりも大事なのが選考が忙しくなり過ぎて現職に影響が出てしまうかもしれないのが、一番の問題でしょう。現職に影響が出ない範囲で無理なく応募をしていきましょう。
少ない応募数=優秀とは限らない
データ的には転職活動で内定を獲得するためには、平均して15~20社に応募することが必要です。
しかし、実際に転職活動をしていると、過半の方は平均値よりも多い応募数になるでしょう。しかし、凹む必要はまったく問題ありません。応募数が少ないから優秀というわけではないのです。
一気に何十社も応募するのは弊害も出てきますが、トータルで何十社になろうと、最終的に自分が納得できる転職先が見つかればそれに越したことはありません。
平均を目安としつつ、数字に振り回されずに「自分は自分、最後に笑えば良い」と思って、落ち着いた転職活動を進めてもらえればと思います。