ITエンジニアやデザイナー、Webディレクターの方などは、求人票を見る際に「専門業務型裁量労働制」というキーワードを見ることがあるかもしれない。今回の記事は、マーリエ社会保険労務士オフィスの監修のもと、専門型採用労働制の話をしたいと思う。
もこも裁量労働制で働いているニャ。いつ寝ても、遊んでも、噛みついてもOKニャ。
そうね、もこちゃんは裁量労働の典型かもしれないわね。毎日自由だものね!
尚、営業職やバックオフィスの方は、原則的に専門業務型裁量労働制の対象とならないので事前にお伝えさせさせていただきたい。そのため、関心がない限りは読み飛ばして貰えればと思う。
専門型裁量労働制とは
まず、専門型裁量労働制とは、厚生労働省が定めた専門性の高い下記19職種にのみ適用する制度で、働いた時間に関係なく労使間であらかじめ定めた時間分を働いたとみなす制度である。その代わりに、会社は労働者に対して、業務遂行の具体的な方法や時間配分について指示することができない。
<専門業務型裁量労働制の該当職種>
新商品もしくは新技術の研究開発、人文科学もしくは自然科学に関連した研究の業務
情報システムの分析または設計の業務
新聞や出版事業での記事取材や編集、放送番組やラジオ放送制作における取材や編集の業務
衣服・インテリア・工業製品・広告などの新たなデザインの考案の業務
放送番組、映画などの制作の事業におけるプロデューサーやディレクターの業務
コピーライターの業務
システムコンサルタントの業務
インテリアコーディネーターの業務
ゲーム用のソフトウェア創作の業務
証券アナリストの業務
金融工学などの知識を用いて行う金融商品の開発の業務
学校教育法に規定する大学における教授研究の業務
公認会計士の業務
弁護士の業務
建築士(一級建築士・二級建築士・木造建築士)の業務
不動産鑑定士の業務
弁理士の業務
税理士の業務
中小企業診断士の業務
※厚生労働省HPより抜粋
1日2時間働いたとしても、10時間働いたとしても、仮にみなし時間が9時間と定められていたとすると、1日9時間働いたことになるということになる。労働時間に関係なく、成果を重視するという制度のため、上手に効率的に業務を行えば、柔軟性のある働き方ができる制度でもある。
求人をみていると、システムエンジニア、WEBデザイナー、雑誌の企画業務・ライターなどに適用されているケースが多い。
メリット・デメリット
メリット
1日何時間働かなくてはいけないという決まりがないので、仕事の進捗や状況に応じて柔軟な働き方ができる遅刻や早退という概念もなくなり、今日は2時間で仕事を終わらせて、残りの時間はプライベートに使うなどということも可能。
昨日の晩は、ニャルソックで虫さん(カナブン)を見つけたニャ。そのあと、寝たニャ。
このように、短時間で効率よく仕事をして、その後の時間を自由に使うこともできる。
デメリット
裁量労働制が適用される職種は、思考や創造する時間が割と必要な職種でもあり、誰かが時間管理をしてくれるわけではないので残業が常態化しやすいケースも。メリットの裏返しでもあるが、自分で時間配分をして計画的に仕事を進められないと労働時間が長くなることもケースもある。
専門型裁量労働制については、2024年4月の法改正により、本人の同意がないと適用ができなくなった。専門型裁量労働制が残業の温床になりやすいケースが多々あったことも一つ理由としてあるだろう。制度の趣旨上、試用期間は裁量労働制を適用しないことも多い、企業側がきちんと本人同意の手続きを踏んで、適法に導入しているかも確認しよう。
フレックスタイム制、事業場外労働のみなし労働時間制との違い
専門型裁量労働制と混同されがちな制度として、「フレックスタイム制」と「事業外労働のみなし労働制」がある。
・フレックスタイム制
日々の始業・就業の時刻を個人が自由に決められる制度であるが、裁量労働制と違い、1月ごと等一定期間の総労働時間が決まっており、例えば、1日8時間労働の場合、2時間で帰ったとしたら、残りの6時間分はどこか別の日に勤務しないといけない。またコアタイムが設けられているケースが多く、12時から16時まで(例)は必ず勤務しないといけないということもある。
・事業場外労働のみなし労働時間制
事業外(営業先、在宅勤務、現場など)で労働をするケースで、会社からの指揮命令が及ばず、労働時間を算定することが困難な場合に、決められた労働時間勤務したとみなす制度である。
ただし、こちらの制度は、携帯やPCなどの通信ツールで、会社から指示を受けている場合はなどは適用外のため、通信手段が発達している現代においては、会社と通信困難というケース自体があまりなく現実的でなくなっているのが現状だ。
現職年収で残業代の割合が高い人は要注意
求人を見ていると、「専門型裁量労働制」適用と記載はあるが、みなし労働時間を記載していない企業が散見される。厚生労働省の統計によると、みなし労働時間の平均は「8時間29分」とのこと。このみなし労働時間も本来は、労使協定を結ぶ際に、実態に合わせた時間を設定するのが望ましいが、実際はみなし時間より労働時間が多いというケースもある。
仮にみなし労働時間が「9時間の場合」、1日の法定労働時間である8時間を超えた1時間分は時間外労働となる。つまり、月の稼働日数が20日だとすると、1時間×20日で、20時間分は残業時間となるということだ。
現職で、残業代が割と支給されている場合、事前にみなし時間を確認しておかないと、年収が大幅に下がることもありうる。記載がない場合は、面接時などに確認しよう。尚、専門型裁量労働制が適用されていても、深夜(22時以降)勤務と休日出勤については、残業代支払の対象となる。
また中小企業などでよく採用されている、「固定残業代(みなし残業代)」は働き方ではなく、賃金体系の制度であるため裁量労働制とはまた別で、併用が可能だ。その場合、固定残業代の金額を超えないと、時間外手当が支給されないので注意が必要である。
まとめ
専門型裁量労働制は、業務に精通しており、優先順位をつけ計画的に業務を行える人であれば、柔軟な働き方を実現できる。
一方で、その企業で専門型裁量労働制が適用されいる人の実態の働き方や、みなし労働時間、賃金体系などを確認しておかないと、現職より残業代が大幅に減ってしまったり、残業が増えてしまうこともありうる。
面接などの際に、上記を踏まえ質問をすれば、きちんと運用されているかがある程度わかるので、専門型裁量労働制が適用されている職種に応募する場合は、頭に入れておこう。