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スタートアップ・ベンチャー企業で働く醍醐味を徹底解説!

スタートアップ・ベンチャー企業で働く醍醐味

スタートアップ / ベンチャー企業について

さあ、これからスタートアップで働く楽しさやメリット、醍醐味について話していこう。みなさんはスタートアップやベンチャー企業って聞くとどんな印象を持っているだろうか?魅力を感じつつも、不安なイメージも持っていることだろう。

転職騎士
転職騎士

そうだな、やりがいや挑戦しがいはあるけど失敗した時が怖いイメージがあるな。

なんか忙しいイメージがあるニャ。できれば日中は寝ていたいニャ。

もこネコ
もこネコ
美人事
美人事

あらあら、二人とも不安なイメージを持っているのね。私が働いている会社はそんなことないわよ。

転職騎士やもこネコさんが話してくれた内容は、スタートアップやベンチャー企業に持っているみんなの印象と近いのではないだろうか。ベンチャー企業やスタートアップへの転職は心配だ!と考える人も一定層いることと思う。漠然と大企業の方が安全だと考える人もいるだろう。

転職ギルドマスターは長らく転職エージェントの仕事をして多くの方の転職支援をしてきた。しかし、大企業を中心に狙って転職活動がなかなか進まない人たちを多く見てきた。

ベンチャー企業やスタートアップに目を向けて貰えると、選択肢が一気に広がると思う。ここではキャリアの選択肢を増やすという観点でスタートアップやベンチャーの魅力について話していこうと思う

革新と挑戦の文化

ベンチャー企業は革新と挑戦の文化を持っている。これは、既存の枠にとらわれず、新しいアイディアや最新技術を積極的に取り入れる姿勢から来ている。社員一人ひとりが積極的に意見を出し合い、プロジェクトを進める過程で、自らの成長を実感できるのが特徴。

しかしながら、全員が自ら最先端で革新や挑戦の先頭に立つ必要もないだろう。ベンチャー企業の中でも、攻めよりも守備が得意な人もいる。バックオフィスと呼ばれる、総務や経理、人事だっている。ビジネスアイデアを出すのが得意な人もいれば、アイデア出しよりも形にするのが得意な人もいるだろう。

関わり方はさまざまながら、自分なりの形で新しいことにチャレンジしてみたいと思う人には、きっと向いていることだろう。

スタートアップ / ベンチャー企業にはお金も人も集まる

近年、ベンチャー企業へ多くの人が転職をしている。なぜだろうか。多くの人がよりチャレンジ思考を持つようになって、マインドや働き方に変化が生じてきたのだろうか。

おそらくそうではない。国内のスタートアップ企業の資金調達の総額は年々大きくなり、調達している社数も伸びてきている。社会全体がスタートアップやベンチャー企業を応援するようになり、ベンチャー企業も採用する体力が付いてきているのだろう。

スタートアップに関する情報を網羅的に集めているINITIALさんから情報を引用させてもらった。

2022年の国内スタートアップの資金調達額は9,664億円。資金調達をした会社は3,675社に上っている。10年前の2013年と比較すると、資金調達額は「10.65倍」、資金調達をした会社は「2.63倍」となっている

ベンチャーキャピタルと呼ばれる機関投資家やエンジェル投資家たちが、年を追うごとにスタートアップやベンチャー企業に出資するようになっているのだ。

投資家(出資者)たちは、見込みのない企業や経営者に出資はしないだろう。むしろ、優秀な技術やサービスを生み出している所にはお金も集まるはずだ。そしてまた優秀な人たちが集まる仕組みが出来上がっているわけだ。

そういった資本(お金)の流れを理解すると、もっとスタートアップやベンチャーへ関心を持っても良いのではないだろうか。お金が集まる所には優秀な人や技術も集まる。スタートアップやベンチャー企業について魅力を感じてくれるだろうか?

スタートアップ / ベンチャー / スモールビジネスの違い

質問続きで恐縮だが、みなさんは「スタートアップ」と「ベンチャー企業」と「スモールビジネス」の違いを知っているだろうか。実は転職ギルドマスターも分かっていなかった。

なんでこんな言葉の違いを意識したかというと、スタートアップの魅力について記事を書こうと思った矢先に、手が止まったからだ。記事を書こうと思ったら、下記のことが頭に浮かんだんだ。

・そういえばスタートアップと似たような意味合いで、ベンチャー企業って言葉もあるよな?スタートアップと何が違うの?
・個人が独立して小さな会社を始めた人も、「うちはベンチャーだ」って言っているような。零細企業もベンチャーにあたるのかな?

そう思って調べていくと、「スタートアップ」と「ベンチャー企業」と「スモールビジネス」という3つの定義に分けられることが分かった。定義の違いが分かると、自分のキャリアを意図して選択していけるからぜひここで覚えていってほしい。

スタートアップとは

革新的な製品やサービスを開発し、まだ見ぬ新しい市場の開拓を目指す企業や個人のこと。イノベーションを通じて社会や人々の生活を変革する目的で立ち上げられるミッションドリブンな集団のこと。

言ってみればベンチャーオブベンチャーと言えると思う。まだ見ぬ市場を追い求めるという意味では、スタートアップはブルーオーシャン戦略を本質的に狙っていて、セットで考えることができそうだ。

まだ見ぬ市場を創り出そうとしているので、挑戦すべきハードルが高ければ高いほど燃えるタイプが合っているだろう。その代わり、うまく行けば将来のGoogleやAppleのように多大な成功の恩恵に預かることができるかもしれない。

ベンチャー企業とは

新しいアイデアや技術を持った起業家が立ち上げた、成長段階にある企業と言われている。革新的な製品やサービスを開発し、創業から数年以内に大規模な拡大を実現することを目指しているのも特徴。そして、その成長を加速させるために投資を受け入れることもある。

スタートアップほどにリスクは取れないが、新しいチャレンジをしてみたいというタイプが合っているだろう。また、会社が軌道に乗れば株式公開(IPO)で上場を考えている企業も多いだろう。

自分が勤めて力を尽くした会社が株式公開まで行ければ、わかりやすい達成感を得られるだろう。自分のキャリアの中でも、いい節目になると思うので、ベンチャー企業で働くのもおすすめだ。

スモールビジネスとは

既存の事業を小規模に展開するもので、小規模企業者の定義にあわせて従業員5人以下の事業を指すことが一般的な理解。例えば、数人で集まって受託型のシステム開発を行うこととか、それこそ転職ギルドの運営もスモールビジネスにあたる。

スモールビジネスはスタートアップやベンチャーほどに目新しさや独自技術はないかもしれない。その代わり、前者2つと異なり手堅さがある。スモールビジネスを開始する人たちは、前職のスペシャリティを活かしてそのまま起業するケースが多いだろうからだ。

一見すると、スタートアップやベンチャーほどにキラキラ感がないかもしれない。けれども、小さな会社を成長させていくという成長過程は同様に辿る。会社の成長を味わいたい、マネジメントのチャンスを早めに掴みたい、という希望がある人には向いているだろう。

スタートアップもベンチャーもスモールビジネスも共通しているのはこれから事業を新しくスタートさせる集団だ。

そのため、新しく何を創り出す喜びや楽しみを追求したいという人には最適だ。早くからジョインして、いずれは自分も中心となって頑張りたい、という気持ちがあれば、なおのことフィットしているだろう。

前述の通り、資金調達を済ませた会社も多々あるので、会社の安定性がしっかりしたところも何気に多い。資金調達を済ませている企業は事業に可能性があるという裏返しでもあるので、積極的に資金調達済の企業を探すのもありだろう

ベンチャー企業の区分は自分だけで分かれば十分

選考を進める過程で、うちはスタートアップですとか、ベンチャー企業ですとか、スモールビジネスですとか企業側が区分を教えてくれることはないだろう。

応募する会社を探す時や選考の中で、自分で区分を意識してくれればと思う。あくまで、自分の希望や価値観などに適しているのかができれば十分だ。

資金調達のラウンドって何!?

せっかく、ベンチャー企業の資金調達の話をしたので「資金調達のラウンド」について触れておこう。ベンチャー企業が成長するために必要な資金を調達する段階のことだ。代表的なフェーズには以下のようなものがある。

a. シードラウンド
シードラウンドは、ベンチャー企業が立ち上げ初期の段階で行われる資金調達のこと。平均すると8,300万円の調達がされている模様。通常、ファウンダーからの資金調達やエンジェル投資家からの資金調達が行われる。この段階では、アイデアやプロトタイプ(構想を形にしたもの)の開発に資金が必要。

b. シリーズAラウンド
シリーズAラウンドは、事業のスケールアップや成長を加速させるための資金調達フェーズ。平均すると2億円の調達がされている模様。ベンチャーキャピタルなどの専門家投資家からの資金調達が行われ、事業の拡大やマーケティング活動に資金が投入される。広告をかけ始めるのはこの時期からかもしれない。

c. シリーズBラウンド
シリーズBラウンドは、事業の成長をさらに加速させ、市場シェアを確立するための資金調達フェーズ。平均すると2億円の調達がされている模様。この段階では、より大手のベンチャーキャピタルや投資ファンドからの資金調達が行われ、事業の拡大や製品開発に資金が投入される。

すごく単純に理解すると、シードラウンド(初めての資金調達)、シリーズAラウンド(2回目)、シリーズBラウンド(3回目)と理解してくれてもいい。そして、IPO直前はシリーズCラウンド(4回目)というのもある。

たまにビジネスシーンで出てくるので教養のためにも覚えておくと良いだろう。同僚や知り合いに資金調達ラウンドの話をできたら、一目置かれる可能性がある(笑)。

シードラウンドからシリーズAまでは、赤字の会社が多い。収支は気にせずとにかく事業の骨格作りに邁進している状況。これがうまく行けばシリーズBで一気に売り上げ拡大を求めて加速させる。シリーズBくらいから黒字化を狙うケースが多いようだ。

資金調達金額の参考:経済産業省「令和元年度 中小企業実態調査事業」(エンジェル税制活用による地方ベンチャー企業活性化に係る調査委託事業)報告書 p.22 図表Ⅲ-8

スタートアップ / ベンチャー企業で働くメリット・デメリット

スタートアップ・ベンチャー企業で働くメリット・デメリット

ここまで、スタートアップやベンチャー企業の類型や資金調達などの話をしてきた。革新と挑戦の文化があるベンチャー企業では、働く上でメリット(醍醐味)とデメリット(不安点)が混在だろう。

スタートアップやベンチャー企業はその性質上、不確実性が高い環境でもある。市場の変化に敏感であり、ビジネスモデルの転換や新しい戦略の導入が頻繁に行われることがある。その分、数年働けば魅力的なキャリアとスキルを有しているかもしれない。高い柔軟性と適応力が身についているであろう。

一方で、プロジェクトの進行が速く、多忙なスケジュールに追われるこもあるだろう。長時間労働や高いストレスレベルに対処する必要もあるかもしれない。

ここからは、実際に働く上での実際に想定しうるメリット(醍醐味)とデメリット(不安点)を見ていこう。少し科学的に解剖していきたい。

スタートアップ / ベンチャー企業で働くメリット(醍醐味)5点

1.マネタイズを学べる

スタートアップやベンチャー企業で働くメリット / 醍醐味のひとつにマネタイズについて学べることが挙げられる。転職ギルドマスター的には、実は一番大事な要素ではないかと思っている。

転職ギルドマスターも決して偉そうなことは言えないが、マネタイズの大変さをいろいろと見てきた。あくまで会社員の立場で見てきたので、本当のマネタイズはわかっていないかもしれない。それでも、ベンチャー企業で働く一番の醍醐味は「マネタイズを学べる事」と言い切りたい。

ベンチャー企業で働きたいと考える人は、「いずれは自分も起業したい」、「ビジネスやマネタイズの仕組みを学びたい」、「自分で事業を創りたい」などといった野望を持った人も一定数いることだろう。

そもそもマネタイズとは何だろう。マネタイズとはサービスの収益化であり、ゼロイチもあれば1→10みたいに拡大させることもマネタイズの一種と言っていいだろう。

マネタイズは、自社のサービスがユーザーのニーズを掴んでいないと、まずもってうまくいかない。ユーザーの心を掴んでいても、競合企業よりも良いサービスをしていないと競り負けてしまう。たとえ良いサービスをしていても、広告をかけて知って貰えなければ、誰も購入してくれない。

ベンチャー企業で働くとマネタイズやマーケティングを生で体感できる。ビジネス書籍や学問でビジネスを学ぶよりも、はるかにリアルな事業作り感じることができる。この体験は何にも取って替えることはできない。この体験は自分に自信を与えてくれることだろう。

2.豊富な人脈ができる

スタートアップやベンチャー企業で働くメリットに、豊富な人脈ができるという点も挙げられる。

ベンチャー企業で働くとわかるが、なんといっても働く社員同士の距離感(特に階層関係なく)が近い。大企業のように階層もわかれていないので、代表と気軽に話もできるだろう。そして、距離が近いことに加え、ベンチャー企業で働く人たちは流動する。要は転職をする。

同期で働いていた仲間や先輩、取引先の人が、どこどこの会社に移った、あるいは経営者や取締役になっていることもあるだろう。気づけば自分の知り合いリストを見渡せば、ビジネスのネットワークが構築できているだろう。

そうした繋がりから、いろいろな話が舞い込んでくる。転職した同僚から同僚の会社転職しないか?といった誘いや、仕事を手伝ってほしいといった依頼から一緒に起業しないか?といった話まで。

転職ギルドマスター
転職ギルドマスター

確かに、Facebookの知り合いも経営者が何人かいるね。もっと人脈を大事にしておけばよかったな(笑)

そうね、何気ない同僚やお得意先が気づけば大事な人脈になるのよね。交友関係は大事にしないとね。

美人事
美人事

3.組織階層の浅さと迅速な意思決定

スタートアップでは、意思決定が迅速に行われることが多い。これにより、プロジェクトの進行がスピーディーになり、市場の変化に柔軟に対応することができる。このスピード感は、従業員にとって非常に刺激的であり、自分の仕事が直接的に成果に結びつくことを実感できる。

これが味わえるのもベンチャーで働く醍醐味のひとつであろう。

でもなぜ、大企業と比べて意思決定のスピードが早いと言われるのだろうか。大企業で働く人たちがゆっくり働いているというわけでないだろう。

それは、組織の階層が浅いから意思決定も早いのだと転職ギルドでは考えている。スタートアップやベンチャー企業の場合、3階層までしかない会社も多いだろう。社長とマネジャーとメンバーという3階層だ。

もう少し階層があったとしても、最終意思決定者の社長との距離が非常に近い。それゆえ、意思決定を迅速にとることができるのだ。社内で何人もの取締役のハンコとを取って、決済を取るまで何日も要するといった煩わしさもない。

一方で、日々色々と変わるため、一週間前に話されていた方針が180度変わっていたり、決定事項が覆ったり、朝令暮改と感じるもあることだろう。しかし、それが良いのだ。変化に対応していけないと会社は伸びないし生きていけないだろう。

4.ユーザーとの距離が近くPDCAの経験が積みやすい

スタートアップやベンチャー企業で働く醍醐味・メリットの一つに、ユーザーの近さも挙げられる。先に挙げた「マネタイズを学べる」という内容に直結している点ではある。

ユーザーとの距離が近いというのはどういうことか。それは、サービスを提供してユーザーの声が聞こえやすいということだ。

大企業のように大きな組織体になると、営業は営業、マーケターはマーケター、デザイナーはデザイナーと職種や機能ごとに組織が分かれていることが多い。そして、その機能や職種の組織の中だけでもいくつか階層があることだろう。

ユーザーの声を聞こうにも、組織や階層は隔てているから、その該当部門にいない限りなかなか聞けないかもしれない。下手したら顧客アンケート調査などをしないと顧客の声は聞きづらい構造になっているかもしれない。

ユーザーの声が聴けると、サービスの改善がしやすくなる。そして、PDCAの経験を積むことができる。PDCAにあたる「C」が、ベンチャーのようにフラットな組織の方が(さっと)行いやすい。

そして、PDCAを回した経験というのはキャリアの中で重宝されやすい。つまり、キャリアを伸ばしやすい環境があると思う。

5.重要ポジションに就けるチャンス

スタートアップは急成長を遂げることが多いため、重要なポジションに就けたりキャリアアップができたりするチャンスが豊富である。これも大事なベンチャー企業で働く醍醐味のひとつだ。

新しいポジションが次々と生まれ、それに伴って昇進の機会も多くなる。自分の努力次第で早期にリーダーシップポジションに就くことも可能だ。今大企業に勤めている人の中には、昇進試験には合格しているがポジションが順番待ちで埋まっている人もいるかもしれない。あるいは、そんな先輩を見ている人もいるだろう。

ベンチャー企業の場合はその点、重要ポジションに就けるチャンスは大いにある。世の中、20代で取締役や事業部長になった人たちを見たことがあるだろう。今、30代や40代の人たちは、そういった若くしてチャンスを掴んだ人たちを比較して、「自分はそんなに能力が違うのだろうか」と悔しい思いをした人もいるだろう。

大企業で40歳、50歳となって管理職に昇進するのとを待つか、ベンチャーで自ら機会を掴みに行くか。ベンチャーの場合は社員数も多くなく、年功序列でもないため、競争倍率はそこまで高くない。ぜひ自分の力でチャレンジしてみて貰えればと思う。

スタートアップ / ベンチャー企業で働くデメリット(不安)5点

1.年収の伸びの不確実性

スタートアップやベンチャー企業は、勤続年数に応じて年収が安定して上がるという期待はしづらいかもしれない。多くの企業はまだ利益を上げておらず、運営資金は資金調達に依存しているからだ。そういう意味では、ボーナスもあまり期待できないかもしれない。

ただし、いたずらに不安を煽るつもりもない。ベンチャー企業は段階を踏んで成長していく。その段階が適切であれば、段階的に資金調達をしていく。その過程の中で、年収も上がっていくはずだ。

一方で、なだらかに会社が成長するわけではなく階段型になるので、次のステップに上がるまで我慢が必要だろう。その代わり、会社のステップが上がるたびに、その分、上り幅はきっと大きいのではないかと期待できる。

ベンチャー=給与の不安定、といったことを言っている人もいるが、それは少し的外れだろう。あくまで、給与の伸び幅が会社の成長度合いに大きく依存するというのが、現実的なデメリット / 不安な点でと言えるだろう。

2.忙しさと相応のプレッシャー

スタートアップやベンチャー企業では、少人数で多くの業務をこなす必要があるため、なんだかんだで忙しいかもしれない

競争の激しい市場で成功を収めるためには、常に高いパフォーマンスを求められる。競争力のあるサービスや技術を抱えていたとしても、うかうかしていると競合企業に模倣されてしまう恐れもある。

また、社員数も少ないためひとりひとりの責任が大きい。重要な社員が一人抜けてしまうだけでも、組織に大きな影響が出てくるであろう。会社としては、できるだけ忙しさや一人にかかる負担を軽減しようとするだろう。しかしながら、事業の成長の方が組織の成長よりも早い時も多々あるだろう。

そういう意味では、マイペースで仕事をするのはなかなか難しいかもしれない。会社の成長、市場の成長と合わせて仕事をしていく必要があるだろう。

3.会社の将来に対する不安

スタートアップやベンチャー企業は、事業がうまく行かないリスクを孕んでいる。市場の変動や競争相手の出現、資金調達の失敗など、さまざまな要因が企業の存続を脅かす。

少々古いデータにはなるが、経済産業省の下部組織である中小企業庁「中小企業白書2017 第2部 中小企業のライフサイクル(P108)」によると、企業の起業からの倒産率は下記となっている。各国データが出ていたので、せっかくなのでそのまま引用した。

起業後の企業生存率(%)の国際比較(創業時を100%とした場合の企業生存率)

1年後2年後3年後4年後5年後
日本95.3%91.5%88.1%84.8%81.7%
アメリカ91.8%75.1%59.6%53.8%48.9%
イギリス83.6%65.9%59.5%49.8%44.5%
ドイツ78.0%67.1%56.2%48.8%42.3%
フランス76.9%62.2%52.3%45.4%40.2%

中小企業と資金調達を受けるようなベンチャー企業を一緒にしてしまうのは少々ナンセンスかもしれない。とはいえ、5年以内に約2割の会社は倒産か廃業している事実は頭に入れておきたい。

自分なりに選考を受ける会社が5年先、10年先と生き残っていく会社なのかどうか、自分なりに見極めることも求められるであろう。会社も採用する人を選ぶし、こちらも会社を選ぶのだ。

4.多様な役割とスキルセットの要求

スタートアップでは、一人ひとりが多様な役割を担うことが求められるため、自分の専門分野以外のスキルも身に付ける必要がある。成長のチャンスでもあるが、同時に新しいスキルを学ぶための時間や努力が必要となる。

例えば、エンジニアであればバックエンドもフロントエンドも時にはインフラまで、フルスタックが求められるかもしれない。人事は広報を兼ねるかもしれないし、総務は経理や社内ヘルプデスクも兼ねるかもしれない。

一人二役、場合によっては三役をこなしている人もいることだろう。ただし、ひとりで二役も三役もこなしている人は、充実感があるせいか清々しい顔をしていることが多い。きっと頼られることの方が多いからだろう。

そして、ひとりで二役も三役もこなしている人の方が、キャリアは安定するかもしれない。確固たる武器がないなんでも屋だと困るが、自分の主軸のキャリアを定めたうえで、汎用的なスキルが身につくと鬼に金棒だ。

もし、スタートアップやベンチャー企業を志望する場合は、「汎用スキルを身につける」を目標にしてもいいかもしれない。

5.入社後研修や評価制度は発展途上

大企業と比べると、スタートアップには社員数が少ないこともあり、入社時から自走が求められる。大企業のようにメンターがしっかりと付いたり、手厚い研修も少ないことだろう。

若手社員や新入社員にとって、指導を受ける機会が限られているため、自ら学習しなければ自己成長の道筋が見えにくいと感じることもあるかもしれない。

また、人事評価制度が構築されていない会社もあり、経営者のさじ加減ひとつで評価が決まってしまう会社もあることだろう。社員が数十名を超えるあたりから、社員の納得性を確保するために人事評価制度が出来上がってくるケースが多い。

研修や評価制度の安心材料

研修や評価制度などは大手と比較してまだまだ脆弱だろう。しかし、安心してほしい。

研修については少数精鋭であるがゆえに、組織としての一定団結も強く、実際に入社したらしっかりと教えて貰えるだろう。会社全体がひとつのチームのようなもので、自学自習を求められつつも、絶えず伴走して貰えることだろう。

評価制度についても、制度こそしっかりしたものがないが、社員数も少ないためむしろ経営者からもしっかりと見て貰える。大企業と異なり、目が行き届くわけだ。それゆえ、評価されないというようなこともないだろう。

経営者からすれば、会社が大きくなって安定を求めて入社してくる人より、会社が若い時期に入社してくれている社員の方がよほど可愛いであろう。

ストックオプションについて

スタートアップやベンチャー企業についてここまで語ってきた。ただ、ベンチャーを語るのであれば、ストックオプション制度については触れておかねばならないであろう。というか触れたい(笑)

ストックオプションを貰うことは、ベンチャー企業に挑戦するうえでの最高の報酬の一つであろう。ちなみに、転職ギルドマスターはストックオプションを貰ったことは、ない。しかし、夢なのだ。

転職ギルドマスター
転職ギルドマスター

ぼくは新卒がSBI証券だったので、IPOやストックオプションという言葉が大好きなんだ(笑)。IPOは証券マンにとってロマンだからね。

なんか突然金融のことを言い始めたニャ。おやつのCiaoちゅ~るが安く買えるのかニャ?

お散歩もこ
お散歩もこ

ストックオプションという言葉はみんな知っているだろうか。会社の従業員や取締役が、自社株をあらかじめ定められた価格で取得できる権利のことだ。詳しい話はググればいくらでも出てくるから、そちらに委ねようと思う。

せっかく一定のリスクやチャレンジをしてスタートアップやベンチャー企業に入るのなら、大きな見返りが欲しいというのが人情であろう。会社が大きく成長するために、同じ船に乗って尽力するわけだし。

ストックオプションが貰える確率は!?

「転職×ストックオプション」に関する情報をいくつか覗くと、国内法人が上場する確率は0.1%だから、ストックオプションを狙うのは現実的ではない、という話が書いてある。確かに、ストックオプションを狙って、IPOまでこぎつける確率は決して高くないであろう。

ただし、0.1%は低すぎる。実際はどうなのだろうか。

中途採用で正社員の雇用を考えている会社は、そもそもで会社として一定の体力がある。その点で、母集団から業績が鳴かず飛ばずの会社は差し引いて考えてよいであろう。

そして、スタートアップやベンチャー企業の過半は、新しいビジネスモデルや新技術などを持っていることが多い。その他大勢の振興企業よりも頭一つ出ている。加えて、ベンチャーキャピタルなどから出資を受けている場合は、IPOを目指してイグジットを狙う可能性は高い

ストックオプションを狙っての転職活動は本末転倒ではあるが、上場しそう(できそう)なベンチャーを探すだけなら、10社に2,3社は狙えるのではないだろうか

そもそもで、中途社員全員にストックオプションを入社時に配ってくれる会社は多くない。幹部候補だけに配るという会社もある。既存株主からすれば、いたずらにストックオプションを発行して、持ち株比率を下げたい道理はない。

ただ、採用条件にストックオプション発行を明示している企業も中にはある。また、入社時はストックオプションは配らないが、入社後に実績に応じて付与してくれる会社もあるだろう。

採用現場における付与実態

実際に、転職ギルドマスターがエージェント時代に支援していた企業や個人で、ストックオプションを入社時に貰っている人は見たことが何度もある。オファー時に付与されるストックオプションの株数が明示されている。

また、既に上場している企業でも、マネジャーや部長候補の人に対しては、ミッション報酬としてストックオプションを発行している所もある。会社と個人の利益を一致させようというわけだ。

先述の通り、ストックオプションを狙って転職活動をするのは本末転倒だ。しかしながら、自分の中で人生一度は狙ってみようと思って、自分の裏ミッションとしてストックオプションを狙うのは全然ありだろう

ストックオプションがもらえてIPOできた場合は、自分の会社を選ぶ目が良かったという裏返しと言えるだろう。

スタートアップ・ベンチャー企業で働く醍醐味のまとめ

スタートアップやベンチャー企業で働くことは、多くの魅力と挑戦を伴う。革新と挑戦の文化、迅速な意思決定、多岐にわたるスキルの習得、キャリアアップのチャンスなど、成長機会が豊富にある。

しかし、不確実性の高い環境や多忙なスケジュールに対処する必要もある。成功するためには、自主性とプロアクティブ(積極的に行動しながら組織に馴染もうとする行動)な姿勢、人間関係の重要性を理解し、実践することが求められる。

スタートアップへの転職を考える際には、これらの点を踏まえて、自己成長とキャリアアップを目指してみてはいかがであろうか。会社に頼らず生きていく力を得ていることだろう

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