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社会貢献性の高い企業へ転職。CSR型と社会課題解決型。

社会貢献性の高い企業へ転職。CSR型と社会課題解決型。

社会貢献を軸に転職活動を始めたものの、どうやって会社を探したら良いか迷子になっていませんか?

社会貢献できる仕事というキーワードで検索をしても、出てくる情報は「医師、介護士、保育士、教員、公務員、警察・消防、NPO」などの職業の紹介があるだけです。

これらの職業はもちろん社会貢献に直結します。しかしながら、多くの人は会社員として社会貢献ができる会社を探しているでしょうから、ちょっとミスマッチですよね。

本記事では、社会貢献をしたいと思っている人向けに、社会貢献ができる会社探しのコツを解説していきます。

社会貢献性の高い企業を探す2つのアプローチ

結論から言うと、社会貢献性の高い企業を探すには、下記2つのアプローチがあります。

・「CSRを通して社会貢献」をする企業を探す
・「社会課題を解決することで社会貢献」をする企業を探す

前者は名前の通りCSRに積極的な会社を探すアプローチです。CSR(企業の社会的責任)とは、企業が利潤を追求するだけでなく、社会への貢献も大事にしようという考えですね。後者は、事業自体の社会貢献性が高い企業を探すアプローチです。

CSR型の企業は本業とは別に、CSRを通じて社会貢献をしていこうとしています。他方、社会課題解決型の企業は、社会課題を解決すること自体をミッションとしていて、本業自体に社会貢献性を見出すという違いがあります。

少し極端な例ですが、CSRに熱心なJT(日本たばこ産業)さんと、障がい者雇用の促進に取り組むLITALICOさんを比較しながら、どういうことか具体的に見ていきます。

CSR型の具体例(日本たばこ産業)

JT(日本たばこ産業)さんの本業はたばこの製造、販売を主に行っています。本業とは別でCSRを熱心に行っています。実際、下記CSRの内容を掲げています。

  1. 格差是正: 恵まれない人々の食糧や教育へのアクセスの向上 など
  2. 災害分野: 災害多発地における防災活動、清潔な水の供給 など
  3. 環境保全:森林の保全や活性化 など

取り組み内容、素晴らしすぎますね。CSRを軸に転職活動をしても良いように思えます。

「包摂的かつ持続可能な地域社会の発展を目指し2015年から2030年の間に、600億円の投資を行い、従業員が30万時間のボランティア活動に従事することを目指します。」という、とんでもない金額と労力をCSRに回しているという実績があります。

社会課題解決型の具体例(LITALICO)

次に、「社会課題を直接解決しながら社会貢献」の例として、株式会社LITALICOさんを見てみましょう。

同社は「障害のない社会をつくる」をビジョンに掲げ、就労支援、幼児教室・学習塾などの教育サービスを提供しています。社会的弱者を助けつつ、雇用も生み出すとても素晴らしい事業を行っています。実際、求職者さんからはとても高い人気を誇ります。

事業自体がとても社会貢献性が高いものとなっています。ただし、CSRに関してはそこまで積極的な投資はしていないようです。

CSR型と社会課題解決型のメリットデメリット

JTさんとLITALICOさんの例を見ながら、CSR型と社会課題解決型企業の姿を見てみました。

ここで、両者のメリット・デメリットを特徴ごとに見ていきましょう。どちらの方が自分にとって社会貢献を目指す形として良さそうか見比べてもらえればと思います。

  CSR型 社会課題解決型
慈善性や救済性 援助の性質があるため、資金がない層にも救済ができて慈善性は高い。 × あくまでビジネスとして社会課題に向き合うため、資金がない層にまで救済はできず、慈善性は低い。
社会課題の根本解決 × 緊急性の高い課題に対する応急的措置の色合いが濃い。 社会課題の「負」の解消に向けてビジネス展開しており、社会課題の解決力は高い。
利益追求とのジレンマ 本業は別で行っているため利益追求のジレンマはない。ただし、本業の業績悪化があれば予算は減る。予算内でしか活動ができない。 ビジネスとして行っているため、利益追求は必ず行われる。ただし、ビジネスと社会課題解決の両立が成立している場合は、影響力は無限大。
社会貢献を目的とした予算 企業にもよるが、CSRとして予算を組んでいるため圧倒的に多い。 × 事業としての予算はあるが、社会貢献を目的とした予算は組まれていない。
キャリアやスキルの成長性 × CSRとしてのキャリア経験値は積めるが、スキルは伸ばしづらい。 自身のキャリアやスキルを活かす形で社会貢献ができる。

CSR型と社会課題解決型、どちらにもメリット・デメリットがあります。慈善性を求めるのであれば、CSR型に軍配が上がるでしょう。根本的な課題解決まで求めるのであれば、社会課題解決型の方に軍配が上がるでしょう。

ただし、社会貢献に自身のキャリア形成という条件を加えた場合は、「社会課題解決型の企業」への転職の方をおすすめしたいと思っています。自身のスキルや経験を活かしながら、社会課題の解決に一役買いながら社会貢献できるからです。

自身のスキルを磨きながら社会貢献もできるため、一石二鳥になるのではと考えています。

日本の社会課題「13種」

日本の13個の社会課題

社会貢献を軸に転職先を探す際、CSRに強い企業を探すべきか、社会課題解決型の企業を探すべきか見てきました。

せっかくなので、どのような社会課題があるのかも見ておきたいと思います。合計13の日本の社会課題をダイジェストで解説します。関心が持てる社会課題があれば、その課題に取り組む会社を探すことで働いてみたい会社がみつかるのではと思います。

少子・高齢化社会

日本の社会課題において、最初の挙げられることが多いのが「少子・高齢化社会」の問題です。日本の人口は、2008年にピークを迎え1億2,808万人、2023年時点で 2011年以降1億2,242万人(-4.4%)で2011年を境に11年連続で人口は減少しています。

2021年は64万4千人の減少だったのですが、 どれくらいの数かイメージが付くでしょうか。船橋市64万人、鹿児島市が59万人、姫路市52万人なのですが、これらの年が1年でなくなったほどのインパクトなのです。

少子化は歯止めがきかず、1970年代は年間200万人近い出生数から、2020年では84万人まで減少しています。さらには、厚生労働省の「出生数、合計特殊出生率の推移」によると、2040年には74万人まで減少するという予測がとなっています。

高齢化については2020年段階では1人の高齢者を2.1人の生産年齢人口で支えていますが、2070年には1.3人で支える状況になると見込まれています。

少子・高齢化が進み、国民保険や税金の仕組みなど社会の根本を揺るがしかねない状況となっています。

医療問題

2025年には、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となることで、国民の5人に1人が後期高齢者という超高齢化社会を迎えると言われています。そして、2040年には、団塊ジュニアが65歳以上となり、人口の約30%が65歳以上という超高齢化社会が来ることが分かっています。

その結果、下記2つの問題が生じることが分かっています。

●医療費の増大
高齢者の増加とともに、国民医療費は年々増大しており、2015年度に約40兆円に達し、2025年には約50兆円に達すると言われています。医療費が増大化すると、保険料負担は大きくなり、世代間の負担格差も生じ、軋轢が生まれてしまう可能性があります。

●医療従事者の不足
高齢者が増える一方で、医療従事者の数は思ったように増えていません。特に高齢者が多い地方の過疎地では、医療従事者の確保は深刻な問題となっています。オンライン診療などの整備が急がれるところです。

介護問題

介護人材の不足は深刻な社会問題であり、2035年には約297万人の需給差が生じると予測されています。そして、介護職の人材不足だけでなく、給与・待遇の問題、社会的評価の低さ、過酷な労働環境など多くの問題を抱えます

介護領域では下記のような課題のキーワードが言われているのですが、それだけ深刻な状況を物語っていると言えます。

・介護難民(介護が必要なのに適切な介護サービスが受けられない高齢者のこと)
・老老介護(介護を行う側、受ける側双方の年齢が65歳以上であること)
・認認介護(老老介護の中でも双方が認知症であるという危険な介護状況)
・国民負担(社会保障給付費の増加に伴う)
・人材不足(2035年には約297万人の需給差が生じると予測)

地方過疎・地方創生

65歳以上が人口の50%を超える限界集落が、なんと日本全国で20,372箇所もあるのをご存じでしょうか。しかも、前回(平成27年)時の15,568箇所よりも大幅に増えています。

日本全体で人口が減っている中で、さらに地方から都市圏へ人の移動もあいまり、地方では急速に過疎化が進んでいます。人口が減ることで、耕作放棄地の増大し、住宅の老朽化が進み、生活水準の維持の限界も見えてきています。

過疎化が進むと限界集落が増え、ますます地方自治体の負担も増してしまいます。また事業の次の担い手などもいなくなってしまい、文化の保全や承継もままならなくなる弊害も起こります。こういった負の連鎖を止めなければならないのです。

※限界集落の数は、令和2年3月の総務省 地域力創造グループ 過疎対策室のデータより参照。

空き家問題

高齢化社会が進む日本では、団塊世代の相続が進み空き家が急速に増加しています。

2033年頃には2,150万戸、なんと全住宅の3戸に1戸が空き家になってしまうという民間予測もあるほどです。適切に管理されず放置された空き家は損傷しやすく危険であることに加え、利活用もされず勿体ない状況となってしまいます。

2023年に空家法が改正され、周囲に著しい悪影響を及ぼす特定空家になる前の段階から空き家の適切な管理が図られるよう、「管理不全空家」に対する措置が新設されています。

リノベーションなどの業界がこれから活性化してくるが予想されます。

労働人口の減少

みずほ総合研究所のレポートによると、2065年には労働力人口は今よりも4割減って4,000万人を割ると言われています。

少子高齢化が進むと労働人口も反比例して減少するため、「労働人口が減っても生産力を減らさないための生産性向上」と「労働参加率を高めるための雇用促進」、2つの推進が求められています。

生産性を高めるため真っ先に思い浮かぶのはITの活用でしょう。日本生産性本部が公表した「労働生産性の国際比較2022」によれば、日本の労働生産性はOECD加盟38カ国中27位でかなり低い位置にあります。まだまだ労働生産性の改善余地は残されていることでしょう。

また、労働参加率を高めるために企業や社会は様々な変化を求められます。まずは、職場環境をホワイト化し長時間労働の解消し、優秀な人材の囲い込みが始まります。そのほか、定年の延長や外国籍の方の採用、地方からのオンラインでの就業など、従来にはない取り組みも必要となるでしょう。

健康経営と労働ヘルスケア

労働人口の減少を受けて、生涯現役社会を作るために健康経営の促進が積極的に行われつつあります。

健康経営とは、経済産業省が旗振り役となり進める施策です。従業員等の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性等を高めるという考えの下、健康管理を経営的視点から戦略的に実践しようという考えです。

証券取引所ともタッグを組み、2014年度から上場企業を対象に「健康経営銘柄」を選定しています。また、2016年度からは「健康経営優良法人認定制度」を推進、大規模法人部門の上位層には「ホワイト500」、中小規模法人部門の上位層には「ブライト500」の冠を与え、評価を与えています。

※経済産業省:健康経営の推進についてを参照。

リスキリング

リスキリングとは業務において必要なスキルを獲得することを指します。既に社会で働いている人が、業務で役立つ新たなスキルや知識の習得を目的に、勉強してもらう取り組みのことです

AIなどの台頭による"技術的失業"への危機感やDX分野への人材育成の需要でリスキリングの需要は年々高まっています。

世界経済フォーラム(WEF)が2020年にまとめた「仕事の未来レポート2020」によると、ロボットやAIなど新たな技術が進化・普及することで、25年までに世界で8500万人が職を失うと予測されています。

わたしたちも定年までずっと同じ職業に就けるか分かりません。時代に置いて行かれないためにも、社会としても個としてもリスキリングは重要な課題であると言えるでしょう。

環境問題

環境問題は、気候変動、大気汚染、海洋汚染、水質汚染、土壌汚染、生物多様性の危機、資源の枯渇、大きく7つに分けて分類されます。

温室効果ガスの排出を実質ゼロを目指すカーボンニュートラルや再生可能エネルギーの導入や、廃棄物削減の取り組みを行う企業が増えています。環境問題に直結したビジネスを展開している企業に関しては、社会貢献性は非常に高いでしょう。

環境問題と向き合う企業であなたのスキルを活かしてみてはいかがでしょうか。

食糧問題

日本の食料自給率は先進国の中でも最低ランクの38%(2022年)となっています。食料品の半分以上を外国からの輸入品に頼っている状況です。

大規模災害などで外国から食糧供給が止まるリスクに加え、昨今の円安問題も長期的に見ると不安要因になっています。実際、日本の食料価格は、2020年を「100」に対し、2024年は「116.8」で、2割近い上昇をしています

食料問題は身近な問題で共感しやすいだけに、AIを活用したスマート農業や養殖など、食料問題と向き合う企業を探してみると、ワクワクする時間を過ごせるのではないかと思います。

※農林水産省資料:我が国・主要国における食料の消費者物価指数の推移

循環型社会 / リサイクル社会

循環型社会とは、大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済社会から脱却し、有限である資源を効率的に利用し、循環的な利用(リサイクルなど)を行って、持続可能な形で循環させながら利用していく社会のことです。

2021年に環境省と経済産業省、経団連が意見交換を行い、合意の上で循環経済パートナーシップ(略称:J4CE)も創設されています。循環経済への流れが世界的に加速化する中で、国内の企業を含めた幅広い関係者の循環経済への更なる理解醸成と取組の促進を目指して、官民連携を強化することを目的とし設立されています。

物流問題

かねてより、物流・運送業界では「2024年問題」が問題視されています。働き方改革法案によりドライバーの労働時間に上限が課され、ドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限され、ドライバー不足が懸念されているのです。

2030年には輸送力の供給不足により「全国で約35%の荷物が運べなくなる」と言われており、運輸効率向上が急務とされています。また、労働時間の上限を決めたことで、ドライバーの年収が減ってしまう懸念も出ており、下記のような影響が出ると言われています。

・物流などのコスト上昇
・運送企業の利益減少
・働き手の収入減少・人手不足の深刻化

物流問題に取り組むベンチャーやスタートアップは次々に出てきていますので、いろいろな会社を覗いてみるのもいいでしょう。

人の移動(Maas)に関する革新

移動や交通に関しても実は課題は多く存在します。

都市部に関しては、慢性的な輸送能力の混雑があります。また、旺盛な海外からのインバウンド需要の増加にも対応しなければなりません。地方においては、人口が減ることで交通基盤の維持限界が起こり、また、運転手の高齢化が進んでいるという現実に直面しています。

そのため、Maas領域(Mobility as a Service)の改革は急務となっています。自動運転など次世代技術を考慮したMaaSという概念のもとでサービスが普及すれば、下記のようなメリットがあると期待されているのです。

①交通機関の効率化
②個人移動の利便性向上
③交通渋滞の緩和
④大気汚染や温室効果ガスの抑制
⑤高齢者事故の回避、減少


以上で、「社会貢献性の高い企業へ転職。CSR型と社会課題解決型。」の解説は終わりとなります。

社会貢献性の高い会社で働きたいと思っても、実際に求人を探し始めるとなかなか「これだ」という会社は見つかりません。ただ、CSR型と社会課題解決型という2つの類型から企業を探して、深掘りしていくと、自分に合った会社が見つかるかもしれません。

あなたのスキルと経験を存分に活かせて、社会貢献性の高い企業が見つかるといいですね (^_^)/~

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